オーストラリアの中心街シドニー。今から15年前、シティと呼ばれるその場所から車で約20分のAshfield(アッシュフィールド)という地に渡った日本人青年がいました。それは単なる観光ではなく、彼自身を探し追い求める旅でもありました。

スポンサードリンク

7/12(金)~19(金)ギャラリーLe Maniにて市川市出身の陶芸家中川智治作品展が開催されます

市川市出身の中川智治さんは現在40歳、行徳在住の陶芸家です。
「市川は賑やかな街ですよね。僕の工房は我孫子市にありますが、閑静なたたずまいで市川とは大分雰囲気が違います。仕事を終えて我孫子から帰ってくると街に戻ってきた、という気分になります」

【陶芸家 中川智治 略歴】

■2015年
 個展 西荻窪「東の風」
 個展 東急百貨店本店
 第8回現代茶陶展 入選

■2016年
 個展 東急百貨店吉祥寺店7F
 第9回現代茶陶展 入選
 第22回美濃茶盌展 入選

■2017年
 千葉県我孫子市に「ASHFIELD LABORATORY」を築窯

■2018年
 個展 仙台三越

紙粘土の作品を先生から褒められた小学生時代。そして時を経た豪州での出会い。

今から15年前、中川さんは26歳の時に単身オーストラリアへ渡ります。都会と野生が共存する豪州の大地で過ごす日々は、中川さんに新たな発見と刺激を与えます。

ホームステイ先の家庭には数々の個性を持った鉢が並べられており、いつしかそれらのフォルムや色彩、表面のテクスチュアに惚れこんでいったといいます。

そしてオーストラリア滞在中、中川さんはスウェーデンの陶芸家ベルント・フリーベリの作品に触れる機会を得ます。この時の感動が中川さんにとって大きな人生の転機となります。

「本当に謙遜ではなく、幼い頃から何も取り柄がない子どもだったんです。勉強もダメ、運動も今一つ。図工の成績は5段階評価の2で絵も描けない。誰かから褒められたというのが殆どない少年時代を過ごしました」

そんな中でも一度だけ、中川さんの記憶に今でも大きく残っている出来事があります。

「小学校3年か4年生の頃です。図工の時間、紙粘土で花瓶を作りました。自分の手、皮膚に伝わってくるひんやりとした粘土の感覚、そして粘土を捏ねて形を変えていく面白さを覚えました。出来上がった作品は自分でも上手に作れたという自負があり、これを図工の先生が褒めてくれたんです」

中川さんが陶芸を本格的に始めるのはここから10年以上を経た後ですが、人から褒められた、認められた瞬間の喜びが今でも記憶に残っているといいます。

オーストラリアから帰国して直ぐに陶芸を始めたいと思い立ち、自宅近くの行徳で陶芸工房を見つけます。そこで修行を続けながらいつしか教える立場になった中川さん。35歳の時に教える立場を辞して創作活動一本に絞ります。これは大きな決断でした。

「僕は陶芸家になりたくてこの門を叩いたのに…このままでは陶芸の先生で終わってしまう。食べていくことには困らないけれど、何も残らない」

中川さんを独立の気持ちに駆り立てたのは、同年代の作家たちの活躍ぶりに対する焦燥感や羨望の思いでした。

「陶芸を教えることは上手くいっていたと思います。ただ真剣に教えながら同時に創作活動を追求していくことの難しさを感じていました。どちらも中途半端になってしまう。こういう気持ちになった以上、ここは陶芸家として大きく舵を切る時なのだと決断しました」

色をコントロールしたい。陶芸の魅力とは?

中川さんにとって陶芸の魅力は、一つとして同じものが焼き上がらないということです。
作りたくても100%同じものは出来上がらない。そこが難しさであり面白さでもあります。

「作品は自分自身を映し出したものです。作っているその瞬間の自分も一つしか存在しない。その時点で自分が持ち得る技術や精神性、そこにかけた思いが唯一無二の形となり作品として残る。これは凄いことだと思います」

また中川さんは作品の持つ「景色」を見てもらいたいといいます。景色とは言い換えれば作品の中に見える個性でありその器の表情である、と。

「完全に思い通りにいくことは稀ですが、僕は焼き上がった時にその作品が醸し出す”色”をコントロールしたい。そう思って*釉薬(ゆうやく)の調合などに励んでいます」
*釉薬(ゆうやく):素焼きの陶磁器の表面に塗るうわぐすり

大切にしている言葉「一事が万事」。いつか地元市川市に貢献したい

「一事が万事」

中川さんが陶芸の作品作りにおいていつも頭に置いている言葉です。

「土を練ったり釉薬の調合に慎重になったり、一つの工程でもおろそかになると作品がダメになります。もっと言えば工房にゴミが落ちていたり仕事を始める環境が整っていないなど一つのサボりや杜撰(ずさん)さが結果物の出来を狂わせるように思います。一つ一つが繋がって最終的に万に行き着く。一事が万事という言葉を常に頭に置いて仕事に取り組んでいます」

現在は我孫子の窯で創作活動に勤しんでいる中川さんですが、これからさらに活動の幅を広げ、少しずつでも地元市川市へ貢献したいという思いがあります。

「今回東菅野のLe Maniさんで作品展をさせていただくのは地元市川への貢献の第一歩だとも思っています。7/12(金)から一週間、作品は約200点をご用意しますので是非お越しいただけたら嬉しいです。主に植木鉢の展示、販売を行います」

ASHFIERLD LBORATORY 2019 -中川智治展- 開催概要

  • 日時:2019年7月12日(金)~19日(金) 12:00~18:00
  • 場所:ギャラリーLe Mani(市川市東菅野)

※7/16(火)、18(木)の2日以外は作家在廊です。7/17(水)はギャラリー休館となります。

陶芸の色をコントロールする釉薬、その材料の一部には灰(=Ash)を混合します。

15年前、市川市に住む青年が自己の存在意義を求めて渡った豪州のAshfield。時を経て陶芸家として活躍する彼がこの地を選んだのは、見えない力に導かれた必然だったのかもしれません。

ライター:u1ro